検事 久賀丞已 2

*この物語はフィクションです。登場する人物、組織、名称等実在のものと関係無く、現実に必ずしも忠実ではありません。ご了承ください。

———

また、あの夢だ。

篠塚雅季(しのざき まさき)はベッドの中で目を覚ましたまま、動けないでいた。

嫌な汗がパジャマの背中を湿らせている。乱れた呼吸を落ち着けようと、深呼吸を試みる。

夢の中では自分は常に十歳だ。十九年の間、何度見たかわからない悪夢は、年月が経っても昨日の出来事のように鮮明だ。

口をガムテープで塞がれ、路地裏の壁に押し付けられた少女。

まだ目立たない胸を、骨張った手がブラウスの上から撫で回す。デニムのスカートをまくられる。怖くて固く目を閉じる。男の荒い呼吸が未成熟の太腿にかかる。

下着を脱がされた脚を開かれ、脚の付け根を弄ばれた挙げ句、性器を咥えさせられた。男はすぐに射精し、雅季の口内とスカートを汚した。この直後に、通行人の気配に怯えた男は逃出した……。

雅季はベッドサイドのスマホで時間を確認し、ベッドから出た。早くシャワーを浴びたい。

今日は久賀に、犯人の自白を録取した調書を届けることになっている。

久賀丞已(くが じょうい)。リムレスのメガネにワンレングスの長髪を後ろで一つに束ねた、検事あるまじき容姿の若手だが、敏腕検事。

そして雅季の初めての男。初めて身も心も受け入れた男だ。そのやり方に多少難有り、だったが。

不思議なことに、久賀に半同意で身体を開かれてから、悪夢の途中で男の行為を邪魔する声が入って来るようになった。声がすると、身体に触れていた男は一瞬で姿を消す。夢の中の雅季は、それが誰の声かわからない。目を覚ましても、ほとんど耳に残っていない。

でも、その声の主が久賀だと思いたい自分の気持ちに、雅季はまだ追いつけない。

地下鉄の駅を出ると、イチョウ並木の黄色い帯が目に入る。灰色の空の下、それは余計に明るく見えた。いや、もしかしたら久賀との約束がそう見せているのかもしれない。

――な、わけないでしょ。

雅季は胸中で自嘲し、交通量の多い大通りを渡った。

原則としての始業九時よりも一時間ほど早いが、供述調書を出勤前に持参する旨は数日前にメールをしてあるし、普段から久賀は朝が早いのは知っていた。

案の定、ドアをノックすると「どうぞ」と声が返って来た。

「おはようございま……」

執務室へ入った雅季の挨拶も終わらないうちに、書類から顔を上げた久賀が、すごい勢いで机を回って雅季の身体をホールドした。

「く、久賀さん……?」

長身の久賀に覆い被さるように抱きつかれると、どうしてもその硬い胸に顔を押し付けることになる。フレグランスの残り香が混じった久賀の匂いに襲われ、頭がくらくらし、とたんに脈も速くなる。

「ずっと待ってたんですから、充電させてください」

久賀はそう言って、逃げようと身をよじる雅季を抱く腕にさらに力を込めた。首筋に埋められた顔の無精髭が首の薄い肌をざらりと擦ると、雅季の身体にぞくぞくと戦慄が走る。

「徹夜、ですか……」

「そうです。まあ、珍しいことではありませんけど」

久賀は普段、あまり物事に執着しないようでいて、譲らない一点は決して譲らないことを、知り合って二回目のデート――彼の壊れたマグカップを買う――からプロファイルしていた雅季は抵抗を諦めた。

久賀の息が首をくすぐると、鼓動がさらに高鳴った。

「シャンプー、変えましたね」

「えっ、えっ……! に、匂いかがないでください!」

力を込めて胸を押し返すと、相手は不承不承に身体を離した。

改めて見る久賀は、普段の一分の隙もない姿から一変して”ヨレヨレ”だった。無精髭、やや肌艶の悪い顔色に張りの無いワイシャツ。それでも、雅季の目にはその粗野な男が魅力的に映ってしまう。

「減るものでも無し……意外とケチなんですね。雅季さんの匂い、好きなんですが」

「ケチとか、そう言うことじゃありません! ダメなものはダメです!」

つい声が大きくなったのは、『好き』という言葉に反応し、心臓をばくばくさせる自分を叱責したつもりだった。

久賀は、視線を泳がせる雅季を楽しそうに見下ろしながら

「まあ、充電はさせてもらえたのでお礼に……」

スラックスのポケットから何か取り出した。

「この喫茶店のコーヒーが美味しいんです。それと、チーズケーキが特に」

「へ?」

思わず受け取ったコーヒー券と自分とを交互に見ている雅季の背中に手を添え、久賀はドアのほうへ促した。

「美味しいんですよ」

「そう言う問題では……」

「コーヒー飲んで、チーズケーキを食べたら戻って来てくださいね。それまでにきちんとしておきますから」

そう言って無精髭の顎を撫でた。

「え? 私、調書届けに来ただけですから……」

「大丈夫ですよ。何なら課長に私から連絡しておきましょうか? 半日検事の久賀のところにいると」

「けっこうです!」

雅季は勢い良く踵を返し、退室した。

券の裏の地図を頼りに、大通り沿いではなく脇道を入った場所に喫茶店を見つけた。

昭和時代にタイムスリップしたようなレトロで、コーヒーの香りがしみ込んだ店内では、出勤前の会社員がスマホや新聞を手に朝食をとっていた。

やがて香り高いコーヒーと一緒に運ばれて来たベイクドチーズケーキ――薄黄色のそれは美味しそうだが、特に変哲は無い――に雅季はフォークを入れた。

しゅわっ、という音とともに、フォークが生地に沈んだ。

――しゅわ?

チーズは濃厚なのにレモンの利いた爽やかな口当たり。その絶妙な美味しさについ頬が緩んでしまう。ケーキが半分になったところで、コーヒーに手を伸ばした。

砂糖もミルクも無し。香りを楽しんだあと一口飲んだそれは、まろやかな苦味に酸味、コクがあるのにすっきりした後味だ。雅季はカップをソーサーに戻すと、ほうっと長いため息を吐いた。再びケーキを食べながら、ふと思う。

――久賀さんって、これを食べてる時どんな顔をしているんだろう。

あの、端正な顔を自分のように緩ませながら食べているのだろうか。それとも、カウンター席でマスターと何か話しながら……。

いや、久賀は一人だ。よっぽどで無い限り、オーダーのコーヒーもいつも同じ。そしてチーズケーキ。コーヒーを飲んでから、ケーキだろうか。

それともケーキを食べ終えて、コーヒーだろうか。久賀も『しゅわっ』を毎回聞くのだろうか。

気にし出すと止まらなかった。久賀のことなら、どんなことでも知りたくて仕方が無い。さっき見た久賀の顔が、聞いた声が頭の中で延々と再生される。

そして、初めて彼に捧げたときのこと。久賀の熱い肌、荒い息づかい、濡れた舌。優しく中を探る長い指。

後日、久賀とはデートを重ねても、抱かれたのはその一度きりだった。それでも、鮮明に身体に、頭に久賀が記憶されている。そして、普段はオフにしているスイッチが自然と入ってしまうと、しばらく自動再生されてしまうのだ。

これは普通なのか。それとも自分の何かが壊れてしまったのか。

今までずっと異性を避けていた雅季は、久賀という男が現れてから自分が確実に変わりつつあることに戸惑っていた。でも、その変化は嫌いじゃなかった。

久賀に変えられることが。

雅季が再び執務室に戻ると、久賀はワイシャツ姿で応接コーナーのソファーに座って雅季の調書を読んでいた。ヒゲは剃られている。

「よくまとまっていました。確認したいことがあるので、もう少しお時間いいですか」

テーブルに調書を置き、メガネを外してにこやかに近付いて来た彼に、コートとショルダーバッグを渡して雅季はソファに腰を下ろした。すぐに久賀も隣に座る。

「雅季さん、相当な活躍でしたね。今回の事件はかなり手間がかかりましたから」

「正直、こんなに疲れたのは久々です。一課総動員、他の部署からも応援を頼んでの捜査でしたから。少し落ち着いたら、しばらく休暇を取るつもりです。でも、久賀さんのほうが公判を控えて、これから大変じゃないですか」

「仕事ですから。すぐに起訴状を裁判所に提出して公判を待つ。いつも通りですよ」

「あ、そうだ、久賀さ……」

すかさず久賀に抱き締められ、雅季は息を呑んだ。優しいが、力強い手で顎を掴まれると、抵抗する間もなく唇を重ねられる。

「ん……んん……」

雅季は小さく喉をならしながら久賀を受け入れ、二人は我を忘れたようにお互いの舌を激しく吸い合った。久賀の手が腰から胸に上がってくる。ふくらみが、温もりに包まれた。

「あん……」

「あのときも、少し触っただけで可愛い声を出しましたね」

囁かれ、雅季はコーヒーを飲みながら、そのことを回想していただけに、すぐにカッと身体の奥が火照るのを感じた。

俯きがちになった雅季の唇を自分の唇で掬うように、久賀は再びそれを捉えて吸った。長い間、舌を絡ませ続け、やっと身体を起こすと雅季がうっとりとした顔をしていた。ぽってりとした唇が唾液に濡れ光り、久賀の欲情を刺激する。

性急な手つきでスーツのジャケットを剥がし、ブラウスのボタンを外して胸を大きくくつろげた。

「や、やめて」

雅季は胸を隠そうとした。しかし、久賀に両手首を掴まれ、無理やり拡げさせられた。

「そういえば、さっき何か言いかけましたね」

高鳴る鼓動に胸を弾ませている雅季は、虚をつかれたように久賀の顔を見た。彼はじっと待っている。雅季はキスにぼうっとした頭で、言いたかったことを思い出した。

「あ……、チーズケーキがほんとうに美味しくて……。これを食べる時の久賀さんは、どんな顔をしてるのかな、って思ったんです……」

「すぐに見せて上げますよ。私が美味しいものを食べているときの顔……」

久賀が乳房に顔を押し付けてくる。ブラジャーを押し上げ、まろび出た乳房に頬ずりしたあと、乳首を口に含んだ。チュッチュッとわざと音を立てて吸ってくる。

「ああっ……そんな……あっ!」

乳首への直接的刺激だけでなく、いやらしく吸われているという思いが、雅季の性感に呼びかける。柔肉をゆっくりと揉みしだく手と、乳頭をめり込ませるように捏ねる舌先とに意識を奪われる。硬くしこった蕾への甘噛みと舌先の殴打に翻弄され、無意識に腰がくねってしまう。

「捜査を頑張ったので、ご褒美はたくさんあげないといけませんね」

久賀はソファーの上に雅季の力の抜けた身体をゆっくり押し倒すと、自分は後ろに身を引いて、スカートのホックを外す。

「やぁ……」

雅季の小さな声と同時に、ブラジャーとお揃いのラベンダー色のショーツが露になった。薄い脂肪をのせた、女らしいウェストから伸びる見事な脚線美に、久賀の視線は一瞬釘付けになった。

ついこの間まで男を知らなかったとは思えないほど、雅季の全身は美しく、また淫媚だった。その魅力に誘われるままに久賀はストッキングに手をかけ、ゆっくりと下ろしていった。続いて下着も器用に脱がしてしまう。

「や……見ないでください……」

久賀の視線が、顔から胸、そしてその脚の付け根へと降りていくのを感じ、雅季の身体は火照り出した。

「綺麗です」

久賀が覆い被さるように顔を寄せてくる。そして雅季の鼻先に軽く音を立ててキスをすると、そのまま視線を外すことなく、彼女の足首を掴んで思い切り左右に拡げた。反動で、雅季の背がソファーに沈んだ。剥き出しになった雅季の恥部に屈み込んだ久賀は、躊躇せずに唇を付ける。

「あ……」

ねっとりと舌が秘裂を割る。すぐに動き出したぬめりに襞の合間を舐め上げられ、雅季は顎を跳ね上げた。尖った舌先は、すかさず薄皮の下に潜む蕾を捉える。

「ううん……っ」

その強い刺激にびくびくと総身を震わせながら、雅季は両手で自分の口を塞ぐ。すると久賀は顔を上げた。

「この時間、このフロアには人が少ないんです」

「え……」

「声を聞きたいと言っているんです」

雅季がためらいがちに頷くと、久賀は再び潤った泉に顔を埋める。男のくぐもった息と水音、雅季の控えめな艶やかな喘ぎ声が簡素な執務室に響き渡った。

「あ、あ……んっ」

久賀はすぐに身体を繋げようとはせず、延々と雅季を口で愛し続けた。ブラウスが捲れた、汗の滲んだ肌にソファーの座面が張り付き、切ない疼きがお腹の中から身体の隅々まで拡散してゆく。

――や……もっと。

もっと深い部分を抉られたいという欲求が抑えられなくなり、雅季は自ら大きく脚を広げてしまう。貫いて欲しいと、言ってしまいたい。だが、はしたない女だと久賀に冷笑されそうで言えない。もともとそんな女だと。だから男に路地裏に連れ込まれるのだと。でも、彼にそんなふうに思われたら、一生立ち直れない。

――こんなとき……どうすればいいの。どうしたら伝わるの……。

雅季は泣きそうになり、久賀の方を見た。気配を感じたのか、男が顔を上げた。

「もう、欲しいんですか?」

見透かされていた。雅季の顔が火のついたように熱くなる。羞恥に涙をこらえた瞳で、何度も頷いた。

「でしょうね。ここからもあなたの気持ちが溢れてぐしょぐしょですから」

男は指先で、陰唇の縁をなぞる。それだけで、入り口がひくひくっと戦慄くのを自覚する。

いたたまれなくなり、目をぎゅっとつむった雅季だったが、上体を起こして久賀はその両足をすかさず掴むと、そのまま雅季の耳の横まで倒した。恥ずかしい部分が真上に晒され、思わず目を開ければ、恥丘の向こうから覗き込む久賀の視線と合ってしまう。相手の切れ長の目がすっと細まる。

「でも、だめです。私はまだ、足りないんです。なにしろ二ヶ月ぶりですから」

言い捨てると同時に、久賀は濡れ光る秘裂を唇で塞いだ。その瞬間、息を吸い込んだ雅季の喉がひゅっと鳴った。

久賀は表面を全体的に舐め上げると、舌をぬるりと潜り込ませた。深い位置まで差し入れられた舌が粘膜の間で何度も翻り、弄る。

指が陰核を軽く摘んで、にちにちと扱く。涌き上がる喜悦とあまりの羞恥に、雅季はただ身体を震わせ、浅い呼吸を繰り返すことしか出来ない。

花弁がしゃぶられ、甘噛みされた。白い太腿が引きつる。指で皮が剥かれ、むきだしの突起を舌先でくるくると転がされると、電流が背筋を走り抜けた。

「あっ、そこっ、……あんっ、あっ……あんっ」

ソファーの合皮に爪を立て、雅季はひたすら甘く啼く。それでも久賀は容赦しなかった。媚肉を舐めながら、時おり唇を押し付け、じゅるじゅるっと愛蜜を吸い込む。その振動が粘膜の奥まで響くと、子宮の切ない疼きが増す。彼は真っ赤に膨らんだ実を唇で挟み、吸い立てて、雅季を確実に追いつめていく。

「はあああ……」

強烈な快感が脳内で弾け、唇から迸った艶めいた声が、部屋の空気を震わせた。抑え込まれた身体の中で、逃げ場のない快感が暴れ回るのを雅季は下腹を波打たせながら、喘ぎ声でやりすごすしかない。

「ぃあああんっ!」

下から伸びて来た手に、揺れていた乳房が包まれ、既に尖りきっていた先端を指で捻られる。

乳首と性器を一度に強烈に責められ、敏感な場所が同時にひくついていた。舌が愛液を一掬いするごとに、そこから身体が熱く蕩けていく。

「欲しいと言ってください」

やっと久賀は抱えていた雅季の下半身を解放すると、彼女の開いた脚の間で片膝を付いた。片足は床に下ろして身体を起こし、まるで雅季に見せつけるかのようにゆっくりとベルトを外し始めた。

スラックスとボクサーショーツを下ろすと着衣姿では伺えないが、意外と逞しい下半身の中心から、ワイシャツの裾を分けて男性器が雄々しく反り返っている。

「私が欲しいと言ってください」

声に切なさが聞こえたように思った。懇願するような男の眼差しに、雅季の中に愛しさがこみ上げた。

「ほ……しい、です。久賀さん、が……」

「あなたからそう言われるなんて、たまりませんね」

秘裂に腰を押し付けて来た久賀が、己の先端を襞の間にあてがったと思うと、鉄のように硬い昂りがねじ込まれる。その滑らかな侵入に、雅季は自分がどれだけ濡らしてたかに初めて気付いた。

「ああ……雅季」

久賀は感情をコントロールしようと悩ましげに眉をひそめている。

「ンぁああん……」

熱い媚肉を掻き分けながらじわじわと浸食していく愉悦に、雅季は息を詰め、全身を戦慄かせた。

久賀は腰を両手でがっちり抱え、たっぷり潤んだ隘路に己を呑み込ませていく。ぐっと亀頭が最奥に食い込むと、鮮烈な感覚が脳天まで突き抜けた。

「全部……入りましたよ」

にこっと笑みを見せた久賀は、そのままソファーに手をついて雅季の乳首にちゅくっと吸い付き、腰を繰り出し始めた。

「ぁ……ふっ……」

突かれた衝撃に、吐息が押し出される。久賀が断続的に膣壁を擦り上げ、時折グラインドさせて中を掻き混ぜると、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が雅季の耳を犯した。

――ああ、掻き混ぜられてる……久賀さんに……。

これが欲しかった。久賀が。この熱が。

雅季は快楽のうねりに翻弄させられ、また、久賀と結ばれた感動に胸を熱くしながら、懸命に声を押し殺す。

だが、法を行使し、罪を暴く場所で禁忌を犯していると思うと、なぜか身体の奥から新たな蜜が溢れてしまう。

――いけない……、誰かが来たら……。

「だ、め……っん、ここじゃ……、だめで……すっ……」

「なら……、やめますか?」

小刻みに浅瀬で抽送を繰り返しながら、胸の突起から唇を離した久賀は、雅季の顔を覗き込んだ。普段は冷淡な目が欲望で妖しく光っているのを見ると、心は乱された。

――満たされたい。久賀さんでいっぱいに満たされたい。

彼女は必死で首を横に振り、久賀の背中に腕を回すとワイシャツをぎゅっと握った。

その瞬間、久賀の頬が上気した。

「可愛いことしてくれますね……」

雅季の額にちゅっとキスを落とした直後、久賀は一気に最奥まで埋め尽くした。雅季は、身体が中から押し上げられるような感覚に強烈な目眩を覚え、思わず久賀にしがみついていた。

「大丈夫、離しませんよ……」

絶対に……。久賀は耳元で囁き、雅季の柔らかな身体をしっかり抱くと、激しく腰を打ち付けて来た。

「あんっ……、あっ、あっ……」

容赦なく隅々まで擦られ、連続で穿たれている場所から甘い疼きが止めどなく全身に広がっていく。

いっぱいに埋められ、苦しくて恥ずかしいのに声が止められず、雅季はいつしか腰を揺らして律動を受け止めていた。

「久賀さ、ん……いい……きもち、いいの、」

「わかりますよ……すごく、締まってるから……私もすごく、気持ちいい……雅季の中が熱くて、とろとろで……好きですよ……どうしようもなく」

荒い呼吸混じりの逼迫した声が、雅季の心に揺さぶりをかける。汚れた私なのに、好きと言ってくれる。最初のときも、そうだった。

この人には自分をさらけ出していいのだと改めて思うと、感情が堰を切ったように流れ出す。

「私も……っ、久賀さんが、好き……っ……んン……」

「こういうときは、丞已、と呼ぶんです……」

身体に言い聞かせるつもりか、久賀はくいっくいっと剛直のくびれで奥を引っ掛けるように腰を使う。弱い場所を擦られ、痺れるような愉悦に頭の中が真っ白になっていくなか、雅季は震える唇で恋人の名を口にした。

「丞……已、じょう、い……っ……」

名を呼べば、恥ずかしさとときめきで甘い疼きが一際うねる。雅季が久賀にさらに強くしがみつき、熱に浮かされたように吐息まじりに名を呼び続けると、彼女の中で、久賀の昂りが一層増した。

「それ……、思ったよりやばいです……、もう、狂う……」

久賀は膝立ちになると、雅季の両手首を掴んだ。

「ぁう……」

身体が引き寄せられ、結合がぐっと深まったところで久賀は激しい抽送を始めた。普段の冷静な彼からは想像のつかない獰猛さで、身体ごと怒張を叩き込んでくる。

二の腕に挟まれ、盛り上がった乳房はその衝撃に大きく弾む。服を乱し、清楚な顔を赤く染めながら喘ぎ声を上げる雅季の淫媚な姿に、久賀はますます興奮し、陰部をほとんど密着させたまま、きゅんきゅんと己を誘い込む最奥を攻め抜いた。

「ぁあっ、あっ、じょういっ、……いいっ、あんっ、なかに……中で、だいじょうぶ……」

「ん……」

久賀が嬉しそうに笑んだ気がしたが、涌き上がる快感の渦に霞んだ視界でそれは曖昧で、直後、一番感じるところを傘に抉られると、雅季は凄まじい愉悦にひきずりこまれていった。

「すご……い、ぁあっ、奥にっ……あん……あんっ」

貫かれるごとに、ひたひたと打ち寄せていた官能の波が膨れ上がり、押し寄せて来る。

「くっ、オレも……、っはぁ……はあっ……っああ、っ」

雅季は手首を引き寄せられるままに、目も眩むような快感のなかで背を弓なりに仰け反らせた。

「ぁ………」

身体を突き抜ける強い衝撃に、一瞬息が詰まった。細く開いた唇は戦慄くだけで声は出ない。

びりびりと感電に似た刺激が後から後から肌を走り去っていった。それでも久賀はがむしゃらに腰を叩き付けてくる。

「っぁあ、はぁ……っ、っはぁ……イク、イク………っ!」

先端を最奥に埋め込んだ久賀の総身がブルリと震えた。ほとんど倒れるようにして雅季の身体を抱き締めると、精液を絞り出すように二度三度と腰を打ち付けた。

情事の後、腕に抱いた雅季が落ち着きを取り戻した頃合いに、久賀は服を着て、デスクからウエットティッシュを持って来た。

「ちょっと、冷たいですよ」

久賀が、未だ露な下半身を開かせる素振りを見せると、雅季は慌てて起き上がり「じ、自分でしますから」と、太腿に添えられた手を押さえた。

「遠慮しなくていいですよ」

「遠慮じゃなくって……」

顔を真っ赤に染める雅季の手を払い、固く閉じた膝を割ろうとすると

「汚いですから……」

雅季は声を震わせた。久賀は俯いた相手の顎を指先でなぞった。そして、おずおずと上げた顔を見据えた。

「あなたは汚くありません。私は、あなたの全てが好きなんです。いや、雅季しか好きになれないんです。それに、あなたを汚したのは私です。これからも、あなたを汚すのは私だけです。だから、私を拒否しないでください」

ふっと緩んだ膝を、久賀は優しく割ると情事の残滓を丁寧に清めた。

「そういえば、休暇を取るって言ってましたね。旅行に行く予定などあるんですか」

「あ、別にまだ何も考えてないんですけど。どこかお勧めあります?」

スカートを元通りに直され、そのままブラウスのボタンを留めようと伸びて来た久賀の手を、雅季は「さすがにそれは」と押しとどめた。

「そうですね、泊まるところでしたら『グランデ・フィオレ』なんていいと思いますよ。プール完備、朝食はもちろん、ディナー付き……」

「それって、久賀さんのマンションじゃないですか。マンションの名前はオーナーの『大華グループ』の”大華”をイタリア語にしただけだって、この間話してたの覚えていますよ」

眉をひそめて立ち上がり、ソファーの背に掛かっていたジャケットを羽織った。雅季のコートを広げた久賀が背後に回るので、一瞬何事かと戸惑ったが、頬を火照らせながら、すぐにそれに腕を通す。

「これから公判で忙しくなるし、あなたがうちにいてくれたら癒されるな、と思っただけです。まあ、でもせっかくの休みなのに雅季は私といたらゆっくり休めないかもしれませんね。すみません、今の、忘れてください」

久賀の、打って変わった殊勝な態度に、かえって他人行儀なものを感じて雅季は一瞬寂しさを覚えたが、やはり彼もまだ自分と距離をとりたいのだと思い直して「そうですよ」と頷いた。

正面玄関まで送ってくれた久賀と業務上の挨拶を交わし、別れた。

検察庁に向かうダークスーツに身を包んだ職員達に逆行する雅季は、身を切るような寒風を頬で受け、たちまち現実に戻される。

身体の中にまだ久賀の熱がくすぶっていた。微妙に身体がだるい。まったく、徹夜明けだというのに、どうしてあそこまで激しく動けるのか。二歳若いとこうも違うのか。

――『オレ』って言った……よね。あの、久賀さんが……。

それを思い出すだけで脈が速まり、頬は熱くなる。それでも頭は恐ろしいほどに冴えていた。

――でも、深入りしないほうがいいのかもしれない。

彼のような、所謂”スペックの高い男”が自分のような女にいつまでも執着するとは思えなかった。いつかは飽きる。

その”いつか”が来ることを考えただけで、不安で堪らなくなる。

久賀が、好きだ。久賀のことを考えただけで、胸が切なく痛むほどに。

でも、今なら引き返せる。

雅季は、頭に浮かんだ久賀の上に、休みを取る前に整理しなければならない領収書や書類を重ねて無理やり仕事モードに切り替えると地下鉄の階段を下りた。

Suicaを出すのにコートのポケットを探ったとき、指先が馴染みのない金属片に触れた。足を止めて見たそれは、キーホルダーもプレートも無いシルバーの鍵だった。

――もしかして。

とくん、と心臓が跳ねる。

――そういえば、美味しいものを食べてるときの顔、ちゃんと見てなかった……。

雅季はそれをショルダーバッグの内ポケットに入れると、つい緩んでしまう口元を、さりげなく立てたコートの襟で隠しながら改札を通った。

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検事 久賀丞已

短いノックの音に我に返ったが顔を上げたタイミングで、ドアが開いた。

「やっぱりここでしたか。もう十一時ですよ。部長が『篠塚がつかまらない』と私に電話して来て」

雅季は、向かい合わせた机の、二つの小島のある執務室に入って来た人物に視線を移す。消灯した室内で長時間パソコンの画面を見ていたせいで、その輪郭はぼやけていた。

それでも、その声を聞けば検事の久賀だとわかる。

しかし、普段は後ろで一つにまとめている髪が解かれ、スーツの肩に落ちている姿を初めて目にした雅季は、妙に色気を漂わせているその男を久賀と認識するに数秒要した。

「あ、携帯の電源落ちてました」

椅子に掛けたスーツのポケットから出した携帯に、充電コードを挿す。それにしても、どうして谷村は自分が久賀と一緒にいると思ったのだろう。ましてやこの時間に。

「急ぎのようでしたか?」

「いや、明日で間に合うと」

雅季はそれを聞いて、上げかけた受話器を元に戻した。そのままラップトップを閉じ、デスクの引き出しにしまって鍵をかけたとき、長い溜め息が降って来た。

目を上げると、机の向こうの久賀は片手に書類を、片手はスラックスのポケットに突っ込んだまま、無表情で言った。

「犯人の情報を集めてばかりで、私がパートナーになってからそこそこ経つのに、誕生日さえ聞こうとしない」

「今日誕生日だったんですか?」

「違いますよ」

「そんなこと言いにこちらへ? 私はもう帰りますけど」

誰もいない薄暗い部屋で久賀と二人きりだと認識すると、なぜか落ち着かない。

「ようは、嫉妬してしまうという話です」

エリート検事の冗談にしては、お粗末だ。雅季は露骨に眉をひそめた。それを無視して、彼は手にしていた書類を鼻の先に差し出した。

「名取香織の供述調書を再読したら、公判前に確認しておきたいことが出て来まして」

「それは検事のですよ」

雅季は、受け取った調書をぱらぱらと繰りながら、セミロングの髪を耳にかけた。

「もう全てハードに入っています」

人差し指でこめかみの辺りを軽く小突く久賀の唇の端がくっと上がる。

「で、確認って何ですか?」

雅季の追う、強盗、及び強制わいせつ事件の担当となった、。

二週間前、雅季が部長の谷村に呼び出され、引き合わされたのが、ダークスーツに身を包んで髪を後ろに束ねた、嫌みなほど端麗な面立ちの男だった。そして、若い。

「君が今担当している例の捜査を担当することになった、久賀氶已検事だ」

そう谷村に紹介されると、久賀は口元に微かに笑みを浮かべながら、雅季に手を差し伸べた。

「久賀です。よろしく」

「刑事部捜査第一課、篠塚雅季です」

簡潔過ぎる挨拶と、初見の“ロン毛検事”に戸惑いながら雅季は久賀を仰ぐようにして、手を握り返した。

「あなたは小学生の時、H町三丁目のパークハイツ二○五号室に住んでいた。両親と妹の四人家族」

久賀の声が耳に入ると、雅季は目を見開いた。確認するのは被害者で、自分のことではないはずだ。

「な、なにを急に……」

「そんなに驚くことはないですよ。私の家族はその一つ上の階に住んでいたというだけのことです。私は私立の小学校に通っていましたから、あなたの家族とはほとんど接点がありませんでしたけど」

雅季が二の句を継げないのを見越したように、久賀は続ける。

「あなたの噂はこの事件担当になってから聞いています。美しい人はそういう点では損ですね。すぐに噂の餌食になる。男性に厳しい、男嫌いとか。その男性を寄せ付けないきつい性格のせいで、女性が好きなのではないかとか。陰では言いたい放題だ。全くバカバカしい。そうでないのは、私が一番よく知っています。あのとき、一部始終を見ていたのですから」

雅季は息を呑む。手のひらにじわりと汗が滲む。

久賀はデスクの端に指先を滑らせながら回ってくると、距離を詰めた。雅季をじっと見据えたままネクタイを緩め、外す。それが白いワイシャツをしゅるりと擦る音が、部屋にやけに大きく響いた。

まさか自分の過去を知る男にここで出会うとは。

あのおぞましい記憶を拭い去るために選んだ場所。自分のテリトリーで、建物の入り口には常に警官がいて、自宅よりも安全だと思っていた場所で。

「調書で私がおかしいと思う点を、篠塚さんはどう解釈されているのか教えてもらいたいんです。もしかしたら被害者の狂言という可能性もありそうです」

「それなら座ってください」

雅季は、すでに帰宅した同僚の席を目で指した。

「それには及びません。ちょっと立っていただけますか」

リムレスの眼鏡の奥の眼差しは穏やかでも、その有無を言わさぬ声音に、雅季は狼狽した。

「どうしてその必要があるんですか?」

「調書通りに検証したいんですよ。何か不都合があるんですか? まさか、私が怖いとか」

「そ、そんなわけない……」

そう言った手前、立たないわけにはいけなかった。自分の意思に反して椅子のキャスターはスムーズに動く。

「背を向けてください。調書通り、手を後ろで縛ります」

「こんなこと、意味があるとは思えませんが」

重ねた手首に巻かれたのが、その感触で彼のネクタイだとわかったとたん、雅季の動悸が速まる。久賀はそれには答えずに、結び終えるとその背を壁に向けて立たせた。

「ちょっと待ってください。調書では拘束された被害者はキッチンの椅子に座らされ、包丁で脅されて現金とカードを取られた挙げ句、暗証番号を言わされたと……」

「私がはっきりさせたいのはその調書じゃありませんよ。あなたの、十九年前のあなたが九歳の時の供述調書です。あなたは警察に全てを話していないでしょう。強要されたわいせつ行為がどこまでだったのか。全て話すのは小学四年生にはあまりにも酷なことですからね」

「どうして……」

雅季の薄く開いた唇は震えるばかりで言葉は続かない。

「うちのキッチンの窓はあのコンクリートの壁に挟まれた袋小路の真上でしたから。マンションの隣が酒屋で入口脇に重ねられたケースで本通りからは死角でしたけど、三階からは丸見えでしたよ、あなたが男にレイプされているところ。ちょうど斜め上から一部始終をね」

全身の血がさあっと音を立てて引いていくのがわかった。顔を寄せてきた久賀の瞳が妖しく光る。

「私には、全てを話してください。そうすれば、長い間、あなたを苦しめているものから解放されると思いますよ」

「い……今更何を……? 見てたなら、どうしてあのとき助けてくれなかったの?」

狼狽し、仕事相手に対する口調でなくなっている事に雅季は気がつかない。

久賀は、その質問が不当だとでも言うように、口元を歪めた。

「当時小学三年生の男子に何が出来たって言うんです? ……いや、違うな」

彼は一瞬足元に視線を落とした。

「動けなかったんだ。そうだ。あの光景に目が釘付けだったんだ」

再び上げたその目には、ずっと解けなかったナゾナゾが解けた、そんな朗らかな表情が浮かんでいた。雅季は力なく頭を振った。

「さあ、思い出すのを手伝ってあげますから。あのとき、最初は確かあなたは、ガムテープで口を塞がれていた。でも、塞いでしまったら話せなくなりますから、ここでは、やめておきます」

彼の指がライトブルーのブラウスのボタンを外し始めると、雅季は「止めて」と目で訴えた。口の中が乾いて、声は出なかった。

――あの時のように。

久賀の手は止まらず、グレーのスーツパンツからたぐり出したそれを開いた。

「男はサングラスをかけていましたね。短髪で、体格はがっしりしていた。さあ、彼はこうしてあなたを後手に縛ってまず何をしたんです?」

「やだ」

やっとそれだけ言い、うつむいた雅季の耳に久賀は囁く。

「すみません。まだ心に深い傷を負っているあなたに話せと言うのは酷でしたね。では、当時のことを思い出して、私の質問にできる限り正確に答えてください」

久賀は、雅季の引き結んだ唇に自分の唇をそっと押し付けた。

「宣誓の代わりです」

それ以上キスはされない代わりに、彼の唇は首筋を何度も吸い、滑らかに喉を上下した。

雅季の肌に嫌悪で鳥肌がたつ。

小学校五年の夏休み前、家の近くで若い男にナイフを見せられた。家は目の前だったのに、通りには人気が無く、あっさり路地に連れ込まれた。

男は壁と自分の身体で雅季の身体を押さえ付けながらガムテープで口を塞ぎ、防犯ベルを取り上げた。

「私は家に帰ると、あまりにも暑かったので、クーラーが効くまで窓を開けたんです。そのときに、眼下に動くものが見えて。あなたの前に膝立ちになった男が、あなたのブラウスを開いて、下着をたくし上げているところでした」

そう言って、久賀はブラウスの前をはだけ、ブラジャーを少しずつ露出させた。

「縁にフリルがある。可愛いですね」

クールビューティーで通っている雅季の下着は意外にも淡いアプリコット色だった。美しい刺繍とレースのそれが、盛り上がった乳房の美しい曲線を彩っている。

久賀は親指をブラのカップの下に入れ、上にまくってずらした。ふるり、と恥ずかしげに乳房はまろび出た。

「やっ……」

雅季は肩を揺らして逃げようとした。

だが、久賀は片手で肩を壁に押さえ付けながら、ブラを完全にずらし上げて、乳房を目の前に露出させた。

「あの時は、もっとささやかな膨らみだったはずですけど……」

久賀は、怯えて、まだ小さく縮こまっている乳首にふっと息を掛けた。

「男は右の乳房を握って、もう一方の乳房の先端を指先でくすぐっていた……」

彼は低い声で言いながらその通りに手を動かすと、雅季は諦めたように固く瞼を閉じた。

ころころと指に転がされる乳首がだんだん芯を持っていく。そっと、乳肌を撫でられた。

「ん……あっ」

嗚咽とも喘ぎともとれる声が喉から漏れた。

乳首に軽く爪が立てられると、そのまま触れるか触れないかの微妙な力で、手は乳房を上ったり下りたりし始める。

「あ、んっ、あぁ……」

抵抗の声を上げているはずが、それはやけに艶めいて聞こえた。

雅季の下腹がひく、ひくんと震える。

喘ぎながら、雅季は呟く。

「やだ……やめて……」

雅季の懇願を無視した久賀は、白い乳房を凝視しながら、指をさわさわと乳首の周辺に這わせ始めた。

その虫の這うような微かな刺激に、雅季の吐息まじりの声はうわずり、呼吸が乱れていく。

「声を出してください。あなたの感じている可愛い声を。あの時は口が塞がれていて、出したくても声が出せなかった。苦しかったでしょう?」

ちらりと横に流した久賀の目線と自分のが合うと、雅季はさっと逸らした。頬が、熱い。

ちがう……。あの時は、ただ気持が悪いだけで、きっと口を塞がれていなくても声なんて出なかった。感じてなんかいなかった。

今だって同じように触られているのに、嫌なはずなのに、なぜか身体の奥から自然と滲み出るように、声が溢れてしまう。

久賀に、本当はいやらしい女なんだと軽蔑されると思うと心が折れそうだ。でもこの肉体の自然な反応を抑える術を自分は知らない。

肌を撫でる手を無視しようとすればするほど、却ってその動きを意識してしまう。

まだ触れられていない場所が、期待に待ちわびて火照り始める。

指先は依然、柔らかな丘の曲線を這い回り、そうかと思うと、ゆるくくぼませた温かな掌で乳房全体が押し包まれる。淫靡な戦慄と溶けるような快感がさざ波のようにあとからあとから打ち寄せ、全身に広がっていく。

「はぅ……んっ、あんっ……」

手はそのままやんわりと柔肉を圧迫し、円を描く。弾力のある乳房は手の力に小さく反発しながらも揉まれ続ける。

久賀は手指を動かしつつ、可憐な隆起に唇を近づけていった。舌を差し出し、乳房をねっとりと下方から舐め上げて行く。甘い汗が唾液と混じる。

官能的に震える隆起に誘われるように何度となく舌を這わせ、双乳とも唾液まみれにしていく。ぷっくりと飛び出た小さな突起を口に含んだ。舌先で転がし、軽く歯を立てた。

その瞬間、雅季の身体が跳ねた。

「んあっ!」

甘い声が、一層高く部屋に響く。

尖り切った乳頭が、口内で熱い舌にねっとりと転がされている。その動きはどこまでも優しい。

「あなたは無垢なはずなのに、ずいぶん敏感ですね」

久賀のその言葉だけで、雅季の腰はびくんと反応する。長い時間をかけて、久賀は乳首を舐めてくれている。

あれ以来、ずっと男というものを避けていた。異性に触れられるのも初めてだった。だから久賀がこんなに時間をかけて愛撫するのが不思議だった。乱暴でない事が。ほっとすると同時に幸福感がじわじわと湧き上がる。彼の手に唇に、舌に翻弄されて更なる快感が生まれて来る。

「久賀さん……、私、汚いです……汚れています……」

自分の身体は、あの時から汚れている。もう何年も経つのに、風呂で身体を何度洗っても、それは今日まで拭いきれていないのだ。

「汚くなんてありませんよ。とても、綺麗だ」

ちゅるっと音をさせて乳首を吸う久賀が、右手で薄い腹を撫でる。それからウェストのくびれを撫で、スーツパンツのスナップを外してファスナーを下ろした。

「そこは……」

せつな、雅季は屈み込むようにして、脚を閉じようとした。

「あのとき、男はデニムのスカートを左手でまくった……今日は残念ながらスカートじゃないので、脱がせますよ」

「えっ……」

戸惑う雅季の顎を指がすくった。唇が重なり、舌が割り込んで来た。困惑する思考を掻き混ぜるように舌は雅季に絡み付き、深く弄る。

「ぅん……んっ……」

濡れた舌にぬめぬめと粘膜が撫でられる感触に抵抗の意思が削がれて行く。するっとストッキングの上をパンツが滑り降りて行った。

息が止まるくらい強く、舌を巻き付かせて貪るようなキスを続けながらも、久賀の手は冷静に、丁寧にストッキングを剥いでいく。

「この時点でもう、抵抗は出来なかったでしょう? あの時と同じようにしてください。怯えて、言いなりになっていたはずだ」

雅季を覗き込んだ瞳は、苦しげに揺れていた。項垂れた雅季の前に久賀は屈み、パンプスを脱がせてストッキングを抜く。

「綺麗な脚だ。もとい、小学生のあなたの脚は棒のようでしたけど」

滑らかな膝から触って、上へ撫でていった。たおやかに肉付いている内腿を指先でそろりそろりとしばらく撫で回す。雅季は怖気が走るのか、脚をぴたりと閉じてしまった。

久賀は、やがてその閉じた脚の間に手をすっと差し入れた。そして柔らかい内腿の間に手を滑り込ませていく。すべすべした肌に挟まれた手は、その感触を堪能するかのように上下した。

雅季は時折身体を震わせ、必死に耐えている様子だった。ブラと揃いのショーツの上から左手の指で恥丘をそっと押す。

くっ、と頭上で押し殺した声がした。

「下着が少し湿って、縦にすじが深く入って割れている」

「いやっ」

そのまま人差し指をそっと垂直に突き入れた。指の腹に雅季の柔軟な熱を感じる。

「だめぇ……」

雅季は蚊の鳴くような声を出し、力なく首を振って哀願してきたが、それは男の嗜虐心を煽るだけで、抵抗として全く意味が無いことを、彼女はあの時も、今もまだわかっていない。

久賀はショーツに手をかけ、さっと足首まで下ろした。

「下着が取られたあと……脚は膝から左右に開かれていった」

脚を開かせると、その付け根の露になった割れ目を両手の親指で割って暴いた。

「あう……い、いやあっ」

閉じようとする内腿を付け根付近で指先に力を入れてぐっと押し広げると、手の下の抵抗はすぐに止んだ。

「もっと脚を広げて。力を抜いて。私が全て拭い去ってあげます」

――拭い去る……。

魔法に掛かったように、雅季は素直に力を抜いた。

恥部を覆う陰毛は薄く、一本一本が細く頼りなかった。そこだけは、まだ当時のままのようだ。

窓から差し込む月光を頼りに、蜜で光る襞の狭間に小さな突起を探し、唇をそっと近づけた。襞に息を感じたらしい、雅季の下腹がピクリと動く。

舌に当たる感触は柔らかい。唇でそっと挟んで、舌先で撫でた。

「ああっ! ……っん、ぁん……」

雅季はもじもじし、呻き始めた。甘酸っぱい匂いがほのかにして、舌に当たっている器官が次第にしこってくるのがわかる。久賀は続けて舐めた。あくまで羽でくすぐるように、そっと舌をそよがせる。

「やっぱり……だめ……、んっ、だめ……、だめっ……」

初めて味わう快感に恐怖を覚えた雅季は、同じ言葉を繰り返す。それでも、淫靡な刺激を送り込まれ続けているクリトリスは小さいながらもしっかりと屹立し、舌先を跳ね除けるくらいになっていた。

「大丈夫。あなたのここは感じていますよ。ほら……」

――ああ、わかる……。久賀の舌の上で、小さな芽がコリコリと、恥ずかしいくらい硬く膨れ上がっている。

久賀は派手な音を立ててそれを吸い上げ、振動を送り込んだ。

「ひあっ」

腰が跳ねる。久賀はひたすら、それを舐めしゃぶった。小さな膣口から蜜がじわじわと溢れてくる。甘酸っぱい匂いのそれは、とろりと流れて襞に滲む。左の指先でその蜜をすくい、可憐な花びらを撫で、それから膣口を撫でた。

「あ……」

雅季が驚きの声を上げた。久賀は陰核をしゃぶりながら、小さく狭い門に指先をめり込ませる。

「あ、ああっ、怖いっ」

引こうとする細い腰を片手で押さえ付け、じわりと指先に力を入れた。

徐々に指先が入ってゆく。膣全体が侵入を拒否しているような抵抗感が指に伝わって来る。

久賀は口の中で屹立しているものを優しく舐めた。小さいながらも舌先にしっかり反応を伝えて来るのが愛おしかった。

刺激を与えているうちに、感触の違うつるりとした部分が出て来た。そこに強い刺激を与えないよう、慎重に唇で撫でる。

「ああっ」

雅季がひときわ大きな声を上げ、腰を震わせた。久賀は動こうとする腰をさらにしっかり押さえ、唇で挟んでやわやわと刺激し続ける。

「あーっ、変っ! 変なの……!」

舌に当たる尖りがぴくぴくっと痙攣した。入れた人差し指がきつく食い締められ、奥に引きずり込まれる。

その瞬間だけ動きを止め、痙攣が止んだ頃再び舐め始める。雅季はすぐに高みに突き上げられてしまったようだ。膝が震えている。支えていないと倒れてしまいそうだった。

「あーっ、また、また変っ! また変に!」

次の波に襲われたのか指がさらにぎゅっと締められ、強く奥に引っ張られた。肉と指の間から蜜がとろとろと流れて来る。口の中で軽く吸ったクリトリスが戦慄いた。

まだ男を知らない身体だというのに、膣だけは必死で挿入を誘っているのだ。久賀は、中に入りたいという烈情を押さえ込むのもこれが限界だった。

「入れていいですか? もう、我慢出来ません……」

雅季はぎゅっと目をつぶったままこくこくと頷いた。

拘束を解いた手を引き、デスクの上に雅季を仰向けに横たえる。

彼はスーツのジャケットを脱いで椅子に掛けると、スラックスの前を開いて下着を下ろした。

解放された勃起がびくんっと跳ね上がった。久賀は、軽く開かせた脚の間に身体を割り込ませると、反り返った屹立を握り、花弁の間に勃起の先端を宛てがう。

雅季は、きりりと眉根をよせた。

「私が、初めてですよね。……いきますよ」

久賀の声が気のせいか震えて聞こえた。雅季は無意識に呼吸を止めていた。

あのとき、股間をいじられ、舐められた後に男の脈打つ肉塊を咥えさせられ、すぐに噴射した精液で口内とスカートを汚された。

だが、幸か不幸か、まだ衰えの見せないおぞましい肉棒の挿入は、ちょうど配達準備をする酒屋の業者の声と、店先でビールケースを重ねる音に阻まれたのだった。怖じ気づいたのか、男は酒屋のバンが走り去る音が遠ざかると、逃げて行った。

久賀は、本当に一部始終を見ていたのだ。

刑事と親以外、誰にも言えなかった過去の闇の片鱗を。彼には隠す事が出来ない。隠す必要は無い。

それに気づくと、久賀に抱かれる事が何かの儀式のように思えなくもなかった。

熱い陽根が、ぬめる左右の花弁を巻き込み、亀頭が序々に割れ目に沈んでいく感触が伝わってきた。

先が少し埋まると、久賀は己から手を離して机に着いた。そして慎重に体重をじわりと掛けてゆく。無理だとわかると腰を引き、ほんの少し角度を変えて再びじわりと圧迫する。その繰り返しだった。

「緊張しないで。力を抜いてください」

恐怖のためか、雅季の身体はだんだんずり上がってしまう。久賀は彼女の上半身を抱きしめ、固定した。シャツ越しに、潰された柔らかな乳房を感じる。

両脚をもっと大胆に割り開き、下からえぐるように突き進んで行く。

「あぅっ」

雅季が驚きの悲鳴を上げた。ほんの少し、めり込んだ。亀頭が柔肉の中に入ったのだ。ただ、その先に抵抗があった。

「ちょっと痛みますが、最初だけだから我慢してください」

久賀は慎重に腰を押し付ける。弾力のある何かが亀頭を押し返そうとするのを、さらに力を入れた。

「いた、痛いっ……」

雅季の顔が苦痛に歪み、目の端から涙がこぼれ落ちる。久賀はそれを唇ですすりながら、さらに力を入れた。

「ひっ……」

内部で突然、ぴりっと何かが避けた感触がした。勢いで亀頭が奥に進む。そこで久賀はしばらくじっと息を潜めた。初めて男を迎え入れる膣は、かなりきつかった。まだ硬く、痛いくらいに締め付けて来る。

じっと動かなくても久賀の屹立は衰えなかった。それどころか、きつい締め付けに反発するかのように、陽根に血がますます送り込まれる。

「動きますよ?」

訊くと、雅季は痛みに耐えながらも頷いている。額に汗が浮いていた。

久賀が細い身体を抱きしめたまま、腰をそろそろ動かし始めると膣がびっくりしたように蠕動し、抜き差しもままならない。

それでも彼は内部を優しくほぐすように、少しずつ突いてゆく。

「痛みます?」

囁くと、雅季は初めて目を開けた。

「もうそんなに……」

「少し動きますね」

ことわって久賀は先ほどよりもストロークを長くした。途端に亀頭と肉幹が無数の襞を感じ取った。慎重に進めていた時にはわからなかったのだ。

「ああ、すごく……いい」

久賀から溜息が漏れた。

未開の地だというのに、膣は男を喜ばせるためにたっぷりと湿り気を含んでいた。

亀頭のエラに襞がねっとりと絡んで来る。

膣全体が律動にあわせてリズミカルに締め付けて来る。しとどに蜜が溢れ、ぬちゃぬちゃと淫猥な音が立ち始めた。

「すごい、きつい……」

「あ……、あんっ、なんだか、また、変……」

雅季は何かわからないが身体の奥から突き上げてくるものを感じ取っていた。その疼きが何かはわからないが、とても切なく感じる。

性器と性器が擦れ合う音はますます高まる。ペニスの動きも滑らかになった。それを受け入れる雅季も、緊張が解けて徐々に柔らかくなって来ている。

二人のすれ違っていた呼吸が次第に合い始める。

「大丈夫ですか? 痛かったら、言ってください」

「痛くない。ズンズンって……響いて、身体が、熱い」

そう言った雅季の中がさらにきゅうっと締まる。

愛おしい。すでに射精したくてたまらなかった。

久賀は雅季の中で射精しようと決めていた。あの経験から、彼女がピルを飲んでいるのは確実だった。それでも、雅季に了解させたかった。

「イきますよ? 全部、中に出しますからね……」

一瞬、雅季が瞠目するが、すぐに首を小さく縦に振った。

「ん……きて」

戸惑いながらも久賀の背中に回された手が、シャツをぎゅっと握る。そんな些細な仕草に、久賀の心が震える。雅季への狂おしい思いのままに、激しく腰を振り立てた。

きつかった膣はだいぶ柔軟になっていた。痛みも失せたのか、雅季は久賀の下で悩ましげに喘ぎ、必死に快楽を追っている。

「……出る、でるっ……!」

久賀はひときわ激しく腰を打ち付けた後、子宮に向かって熱い精液をほとばしらせた。

乱れた息が整う頃、雅季からずるりと久賀が抜かれると、尻の方へとろりと生暖かいものが流れた。

彼はそのまま優しく口付けて来た。唇が離れると、雅季は間近で見下ろす男から顔を反らす。

「恥ずかしい……」

「可愛かったですよ……とても」

久賀は雅季の上から半身ずらし、耳元で囁くと火照った乳房に手を当てた。興奮し、ぴんと立ち上がった乳首の誘惑を拒めない。

それを右手の指先でつまんで捻りを加える。爪先で軽く引っ掻く。

「あん」

雅季が恥ずかしげに身を捩った。月光で、頬がさらに赤く染まったのがわかる。そういえば満月か、と久賀はふと思い出した。

右手を雅季の股間に忍ばせた。陰毛が、溢れた蜜を吸ってしっとりと潤っている。容易く彼女の快楽の拠点に辿り着いた。

そこはすっかり柔らかくなって引っ込んでいた。指の腹を使い、その辺り全体を圧迫しながら少しずつ刺激を与えて行く。

黙っていた雅季が眉間に皺を寄せ、喘ぎ始める。乳首とクリトリス、両方の刺激に何か先ほどと違うものを感じ取っている。じわじわと両脚が開いて行った。

「あ、久賀さん……私……おかしい……」

縋り付くように両手を久賀の首に回してきた。自ら両脚をさらに、肩幅くらいまで開く。久賀の指は割れた陰唇の中で小刻みに動き続ける。

膣口から新たな蜜が流れ出て来た。上下の突起は硬くしこり、甘い痺れを雅季に送り込んでいる。濡れた指が張りつめた陰核をするりと撫で上げた。

「あっ!」

雅季がびくっと身体を痙攣させる。久賀は蕾に蜜を塗り付ける行為を、執拗に繰り返した。雅季は何度となく小さく叫び、だんだんその声が切羽詰まっていく。

「あっ、あっ! 駄目っ! 駄目え!」

尖り切ったものを指の腹で左右に殴打した途端、雅季が叫んだ。

久賀はそのまま身体を下にずらし、淡い茂みに顔を埋めた。散々弄ばれたそこは、皮がむけ、尖っていた。それを舌で凌辱し、音を立てて吸い立てた。

「あん、ああん……あうん」

明らかに発情の声音だった。久賀は、顔を埋めている場所から立ち昇る情事の濃厚な香りに陶酔したように、ますます熱心に舐め、同時に膣に指を差し込み、膣壁を優しく擦った。

「いやあーっ、駄目ぇっ!」

雅季の腰が浮く。凄まじい勢いで指が締め付けられる。久賀は顔を上げ、愛芽を転がしながら、雅季の喜悦に歪む顔を見つめた。突然、クリトリスがひくひくっと痙攣した。

「はあ……っ」

四肢を弛緩させた雅季は長く息を吐く。凄まじい絶頂を迎えたのは明らかだった。ふっと綻んだ久賀の口元は蜜で濡れ光っていた。

「イク顔見たら、またしたくなりました」

再び覆い被さる久賀を、雅季はオーガスムスの余韻で焦点の合わない目で見つめ、意外な事を言った。

「自分で、入れたい……」

それを聞いた久賀は、部屋に入って来て初めて動揺を見せた。しかし、すぐに口元に薄い笑みが刻まれる。ただ、それは普段の冷淡なものではなく、ずっと穏やかだった。

「今日はダメです。私に全て委ねて、あなたがするのは、また今度」

自分の下半身に伸ばしかけた雅季の手をやんわりと押さえ、指を絡める。それを机上の顔の横で抑え、久賀は猛りをひくつく襞の間に宛てがうと、再び伸し掛かる。腰を突き出すと、太い幹はぽってりと充血した花びらの中へいとも簡単に吸い込まれて行った。

「やっぱり、きつい……」

久賀は思わず声を上げた。膣が相変わらず幹に絡み、締め付ける。精液が吸い上げられそうな誘い込みに、このままでは雅季より先にイってしまう。

久賀は注意深く内壁を探るようにゆっくりと動く。か細い喘ぎの漏れる、薄く開いた雅季の唇を食みながら、迫る射精感を紛らわせる為に、絡む吐息の狭間で言った。

「自分だけがトラウマに苛まれているなんて思わないでくださいよ。……私にも相当なショックだったんですから。あなたたちが引っ越して行った直後、夜尿症になって、治ったのは小学校高学年に上がってからです。だからと言ってあなたのことを忘れたかというとそうではなく、逆にあの時の光景と想像が入り乱れて悩まされるようになった。ちょうど性教育が始まった頃ですし。自慰をするときは必ずあなたの顔が浮かんだ。いや、あなたの顔しか浮かばなかった。それはその後、彼女が出来てからも変わりませんでしたよ。中に入れる時、そこがあなたの中だと想像した。犯人の男も入れることができなかったあなたの中だと。きっとそこは温かく、狭く、私を締め付けるとね。そう思わないことには興奮出来なかったんです。絶対にイけなかった。もちろん、そんな状態で彼女との関係は長くは続きません。自己嫌悪に陥るんですよ。彼女に対しての後ろめたさもありましたし。つまり、私には、あなたじゃなきゃいけなかったんです。絶対に。だからあなたを必ず探し出そうと決意した。そしてそんな私の前に偶然にもあなたの妹が現れた。私が高二年の時、彼女がその私立高校に入学し、こともあろうか私の所属していた弓道部に入ったんです。それで、話すうちに、あなたが将来刑事になると決めていると聞いた。それで私の進路も決まったんです。幸い、成績はトップでしたし。ただ、警察は嫌いでね。けれど検事なら、こうして出会えるという確信はありました。この日をどれだけ私が待ち望んでいたかなんて、あなたにはわからないでしょうね……」

聞いているのか聞いていないのか、雅季は潤んだ瞳に恍惚を浮かべてただ久賀を見つめている。

いや、久賀を瞳に映しているだけで、何も見ていなかった。

身体の中で膨らんで行く快楽以外の全てを拒み、ただ絶頂を目指して感覚の全てに全神経を集中しているようだ。

「でも、すぐにわからせてあげますよ。心にも、体にも。私から逃れられなくしてあげます」

負け犬の遠吠えのようだ、と久賀は頭の後ろで思った。ずっと焦がれていた女の身体に、すでに溺れているのは自分の方だ。これが欲しかった。雅季さえ手に入れば、もう何もいらない。

身体を突き上げ、揺らせば、男を知ったばかりの粘膜が襞が嬉々として蠕動し、肉幹を扱き、亀頭を撫でた。吸い込みが強く、この瞬間にも射精してしまいそうだ。久賀は歯を食いしばって耐え、速い律動に入った。

「んっ……んっ、きゃっ、ゃん……っや……」

「ずっと……ずっと欲しかった。ここに、あなたの中に、入りたかった……感じたかった」

こくこくと頷く雅季の、小振りな乳房が揺れる。それを激しく縦揺れさせるつもりで久賀はますます大きく腰を振った。亀頭が、雅季の弱点を突く。雅季も悩ましげに目を瞑ったまま腰をぎこちなく揺らし、感じる場所へ久賀を誘おうとしている。

「あぁ、そこっ……変っ! 変になる……っ」

「っく……う、締まる……」

怒涛のような快楽が二人に襲いかかる。

「ああんっ、アアン、あああっ……!」

「で……出るっ…………!」

「落ちるっ……、怖いっ」

長い脚が、久賀の暴れる腰に巻き付く。繋いでいた手の甲に、雅季の細い指が食い込む。体液にまみれたお互いの下半身の滑らかな動きは絶頂へ一直線に向かい、もう止まらない。

雅季が全身をがくがくと震わせた。久賀は、熱くどろどろに溶けても、自分を締め続ける膣の最奥をぐっと突き、どくどくと精を放った。

長い射精を終えても、久賀は荒く呼吸を繰り返しながら雅季を強く抱きしめていた。その腕の中で突然、雅季が堰を切ったように泣き出した。

「泣いて下さい。気が済むまで……」

久賀は、子供のように泣きじゃくる雅季の小さな頭を、何度も何度も撫でた。